はいドーモ(^^)/
精神科看護師のささやんです!!
転倒・転落って精神科だけでなく一般科でも日常的に事故があると思います。
今回は患者の転倒・転落によって後遺症が残った患者側が起こした裁判で、病院側が敗訴となった事例を紹介していきます。
病院と裁判してもだいたい病院側が勝つと思っていませんか?
しかし、中には裁判に敗訴し、高額な請求が認められる場合もあって恐怖を感じます(´;ω;`)
今回はそんな、裁判所の判断を知ることで、以下のことが分かります。
①看護師の注意義務とは何か
②事故を起こさないようにするにはどう対応するといいか
この2つをしっかりと知ることで安全な医療につなげ、自分の身も守れるようにしましょう!!
事例紹介
患者X:52歳男性
4/1自宅で意識消失にて倒れ、病院へ搬送。検査の結果てんかんが原因であることを疑いICUで経過観察とした。
翌日には患者の意識も回復し「帰る」と言っていた。
そして、看護師が患者Xから目を離したすきにベッド柵を乗り越え、転落。
痛みの訴えなどはなく特に変化はなかった(事故1)
看護師はスタッフ間で相談し再度転落の危険性があると考え、座位の状態からベッド横の策を乗り越えて転落するのを防止する必要があると考えた。
身体拘束は避け、監視を強化するとともにベッドを壁に着け、同じ高さのベッドを2台並べて両方の外側に柵を設けた。
同日7:40「アリがいる」とシーツを指したり、ベッドの端に寄ったり、ベッドから降りようとした。
8時には傾眠様であったが、午後11時には「これはずれんのん」と訴えたり、ベッド上でふらついたり、立ち上がったりし、また、帰ろうとしたり、マットに倒れこんだり、三方活栓をしきりに触るなどしていた。
そこで午後11:40医師指示によりセレネース1A筋肉注射し、患者は入眠用となった。
4/3午前1時ころ他患者対応中のため、患者xのそばを離れると1.2分後ベッドのほうから「ドスン」と音がしたためベッドへ向かうと足側に倒れている患者Xを発見した。(第2事故)
患者Xはどの転落により、もともと頸椎の脊柱管狭窄症があったが、さらに同部位の脊髄が圧迫を受けたことにより、四肢麻痺となった。
「ドスン」って音とかみんなが敏感になる音ですよね・・・
まさかベッドからの転落で四肢麻痺になるなんて(´;ω;`)
色々対策はしていたようだけど、なんで病院側が敗訴になったんだろう??
お互いの主張
患者側の主張
①再度転落することは予見できたから、抑制帯を使用するなどの義務があった
②ほかの患者の処置にあたるに際し、ほかの看護師に患者Xの監視を依頼することなく、患者Xのもとをはなれるなど、監視義務に違反した。
病院側の主張
①病院の医師、看護師はベッドの足元から転落することは予見できなかった。
また、ベッドを2つならべ、一方を壁に着ける対応をしており、ベッドから転落することを防止する義務は果たしている。
②看護師は夜間看護体制のもとに他患者の陥った緊急事態に対処しなければならなかったこと、常時監視と言っても、どう看護師が目を離したのは数分であり、その直前に患者Xが眠っていたことを考慮すれば、診療契約上の義務に違反するということはない。
裁判所の判断
1、抑制帯使用義務について
セレネースの患者Xに対する鎮静効果は限定的であり、患者Xがベッドに立ち上がってマットに倒れこんだ時点で筋肉注射しても、鎮静効果がすぐに期待したほど得られる見込みは薄かった。
しかも、ベッドに立ち上がる行動はベッドを壁付けにして、両ベッドに柵を立てる措置をとったことを前提としても、転落の危険が非常に大きい行動であり、そのほかにもベッドから降りようとしたり、「アリがおる」などの幻覚を有していたのだから、起き上がって、ベッドから転落する現実的な危険が高度の状態であった。
しかもICUのベッドは特有の高いベッドであり、柵を乗り越えて転落した場合、重大な障害を負う危険が極めて高かったから、そのような事態は極力防止するべきであった。
さらにベッドをより安全な低いベッドに変えるとか、柵を高くするとか、鈴をつけるなどの方策もとり得なかった。また常時監視もできない体制であった。
そうするとベッドからの転落を防止するには抑制帯を用いて、体感を抑制する必要があり、その義務があった。
2、監視義務違反について
アラームが鳴ったことにより患者Xが覚醒し不穏な動きに出る危険性は現実的であった。
同じフロアの近接した場所にいた看護師にごく短時間の監視を頼むのは一声かければ容易であったと考えられることからは、こうした対応がほとんど不可能を強いることにはならない。
また、ICUの看護師は他の患者の緊急の対応が終われば、できるだけ速やかに目を離した患者の監視に戻るべきであり、看護師は他患者の対応を別の看護師に委ねた後は、いったん患者Xのもとに戻って監視に復帰し、変化がないかを確かめるべき義務を負っていた。
にもかかわらず看護師は他患者の対応が終わった後、患者Xのもとに戻ることなく、さらにほかの患者のところへ行っており、監視義務違反が存在する。
との結果になりました。
ちなみに第一審では、対応していたし、抑制帯を行う必要がないものと判断していましたが、
控訴審では、転落対応もしていたことを以って、転落リスクが高いことを示す事情として評価されています。
参考文献
看護師の注意義務
抑制帯使用の義務とか、看護師の監視義務違反とか怖いこと言ってるなー
転落の危険が高い患者だったし、しっかりと対応はしているように見えたけど・・・
結局、どうしていればよかったの?
まとめ
本件では転落防止措置を行っていましたが、結果事故となり四肢麻痺となってしまいました。
控訴審では抑制を行う義務についても触れていましたが、
入院患者の身体を抑制することはその患者の受傷を防止するなどのために必要やむを得ないと認められる場合には「許容されるべき」とされているようです。
文字通りに解釈すれば、必要やむを得ない場合でも身体的自由の制限につながる「抑制をしなければならない義務」まではないという評価も可能です。
しかし
患者の受傷防止のために必要やむを得ない状況にありながら、抑制をしないことはそのこと自体が注意義務違反(過失)であると考えることもできます。
患者の生命・身体の安全と、患者の尊厳の尊重って両極に合って、どちらを優先させていいのかすごく悩みますよね(´;ω;`)
自分的にもその人と家族の意思、年齢や、性格、生活環境などいろいろなことを総合的に考えて、考えて、考えて、抑制が必要かどうか医師とよく相談します。
できるだけ、患者の意思を尊重させてあげたいですが、事故があった時の個人や、病院側の損失を考えると、行動制限に流れてしまう人がいてもおかしくないなーと思います。
ただ、裁判でこのような判決が出てしまうと、行動っ制限はするべきみたいになって、今の時代とは逆行しているようにも思えますね。
今回の事例を通して、少しでも看護師の注意義務と責任、行動制限についてなどを考える機会になってくれればと思っています。
以上
ささやんでした(^^)/
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